バイオ医薬品精製工程におけるウイルスクリアランス
モノクローナル抗体 (mAb) 製剤や血漿分画製剤など、多くのバイオ医薬品は生物学的原料を使用して製造されています。そのため、ウイルスや微生物などの外来性感染性因子が意図せず製造プロセスに混入し、製品を汚染するリスクがあります。外来性感染性因子の混入が基準値以下であることを証明するには、製造プロセスでの徹底した試験の実施に加えて、それらが製造プロセスにおいて除去が可能であることを証明する必要があります。
医薬品規制調和国際会議のガイドライン ICH Q5A「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」* では、「ウイルスの感染性はウイルスの不活化又は除去によって低減する」こと、そして、「ウイルスクリアランスは、例えば、不活化工程が 2 段階以上ある場合、相互補完的分離工程が複数ある場合、あるいは不活化及び分離工程が複数組み合わされたような場合に効果的に達成される」と言及されています。
不活化工程には、低pH処理および、有機溶媒・界面活性剤による処理、相互補完的分離工程には、フィルターによるろ過工程と、陰イオン交換クロマトグラフィー工程による吸着が含まれます。このように、メカニズムの異なるウイルスクリアランス技術を組み合わせることで、製品のウイルス安全性を向上させます。
ポールは、バッチ式・連続生産方式それぞれに対応する、ウイルス不活化に関する技術と、ろ過およびメンブレンクロマトグラフィー技術による相互補完的な分離技術を提供しています。
*独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 「ICH-Q5 ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」https://www.pmda.go.jp/files/000156380.pdf
ウイルスクリアランスのための、不活化および除去技術
ポールは、バッチ式・連続生産方式それぞれに対応する、ウイルス不活化に関する技術と、ろ過およびメンブレンクロマトグラフィー技術による相互補完的な分離技術を提供しています。
ウイルスクリアランスのためのソリューション
ウイルスフィルターによるウイルスろ過
ポールが提供するウイルス除去のソリューションは、さまざまな相互作用パラメータに影響を受けにくい最適なフィルターによるろ過技術です。ウイルスフィルターは、カードリッジタイプとカプセルタイプの2種類をご用意しています。
モノクローナル抗体 (mAb) および血漿分画製剤におけるウイルス除去のためのソリューション
フィルターによるウイルスろ過工程は、ウイルスの大きさに基づいた除去方法であり、特別に設計された合成高分子膜を使用して、ウイルス粒子を膜の表面または細孔内に保持します。
ウイルスろ過における重要な指標は、LRV (Log Reduction Value: 対数減少値) とスループットです。これらは、ウイルス負荷量、含有タンパク質濃度、不溶性成分の存在、操作圧力、流速、イオン強度、操作の開始・停止における圧力遮断 (送液の一時停止、再開による圧力開放) など多くの相互作用するパラメーターによって影響をうける可能性があります。そのため、予想される操作条件の範囲における最適なフィルターを選択し、検証を行うことが特に重要です。
ポールではウイルスろ過のさまざまな課題に対応するため、使いやすく堅牢な製品を開発してきました。どのウイルスフィルターも、従来のステンレス製配管ラインに組み込むためのカートリッジタイプと、カプセルタイプ (一部は滅菌済みのシングルユースマニホールドとして組み込むことが可能) のラインナップがあります。

モノクローナル抗体(mAb)製剤製造用のウイルスフィルターおよび専用プレフィルター
Pegasus™ プライム ウイルスフィルターおよびPegasus プロテクト プレフィルター
世界中に拡がる商業生産プロセスへの採用
2016年に発売開始後、2017年の時点ですでに製薬会社5社が商業生産プロセス(膜面積 0.1m2以上)でPegasusプライムウイルスフィルターを採用しました。2018年12月までで実績は16社になり、Roche社、ProBioGen社、BioSanaPharma社、Mycenax社など世界中に拡がりを見せています。発売以来、6 Log以上でスパイクされたウイルスは6 LRV以上のウイルス除去効果が認められるなど、50を超えるウイルスバリデーションの結果がフィードバックされています。
ウイルスフィルターに関するバリデーションサポート
ウイルス不活化プロセス
ウイルスの不活化は、プロセス液中の目的成分の活性を維持しながら、ウイルスタンパク質を不活化させるプロセスです。モノクローナル抗体 (mAb) の製造プロセスでは、低pH条件による不活化が一般的で、pH 3.5で1時間保持することにより、エンベロープを持つウイルスに対しての効果が確認されています。血漿分画製剤の製造プロセスでは有機溶媒や界面活性剤の添加によるウイルス不活化が一般的です。
ウイルス不活化工程における重要な要件
不活化プロセスの効率は、処理液を迅速に撹拌し均一化することと特定の条件を保持する時間に依存します。ポールは、低pH条件によるウイルス不活化処理を、バッチ式または連続生産方式のいずれのプロセスにも適用可能なシングルユース自動化システムを開発しました。

自動化
Allegro™ MVPシングルユースシステムとAllegroシングルユースミキシングシステムを組み合わせて使用することで、さまざまなバッチ容量における酸・アルカリ添加のステップを自動化します。設定されたpHに対して精度の高い制御が可能なため、目的タンパク質の変性を回避しながらもウイルスを不活化するための、確実なpH制御を実現します。
Allegro MVP シングルユースシステム
Allegro シングルユースミキシングシステムシリーズ

連続プロセスにおけるウイルス不活化システム
Cadence™ ウイルス不活化システム
効果的なウイルスクリアランス
モノクローナル抗体 (mAb) などの精製プロセスにおいては、適切なイオン強度条件下で、陰イオン交換体 (樹脂またはメンブレン) によるフロースルーモード (ネガティブモード) でのウイルス除去が行われています。陰イオン交換クロマトグラフィーは、宿主細胞由来タンパク質(HCP)やDNAなどの不純物低減と合わせて、効果的なウイルスクリアランスを実現します。
Mustang® Q メンブレンクロマトグラフィーカプセル
カラム充填の手間が不要で、すぐに使用可能なメンブレンクロマトグラフィーのデバイスは、利便性や高いウイルス除去効率を達成できる最適な選択の一つです。ポールのMustang Qメンブレンクロマトグラフィーカプセルは、多くの製造プロセスにおいて、ウイルスクリアランスに関する実績のある戦略として採用されています。
カタログダウンロード
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JUSD2185_ポールMustangQカプセル
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JUSD2599_ポールMustangQ XTカプセル
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「英語」と表示されますが、ダウンロードされるのは日本語のカタログです。
経験と実績に裏打ちされる卓越したエンジニアリングサービス
ポールでは、20年以上にわたり、卓越したエンジニアリングサービスにより、単一工程からダウンストリーム全体の完全なEnd-to-endのソリューションまで多様なニーズに対応してきました。
ステンレス製システムもしくはシングルユースシステム、バッチ式もしくは連続生産方式、自動化対応など、お客様のニーズや製造プロセスの特性にあわせ、ウイルスクリアランスのための最良の選択ができるようサポートします。